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『サガエメ』全主人公クリアレビュー&感想。周回すればするほど深みがにじみ出るスルメゲー。尖りすぎて、好きな人は絶対好きなやつ【サガ エメラルド ビヨンド】

文:電撃オンライン

公開日時:

 スクウェア・エニックスが、Nintendo Switch/PS5/PS4/Steam/iOS/Androidで2024年4月25日に発売予定の『サガ エメラルド ビヨンド』(サガエメ)。本記事では、各主人公を最低でも1周以上クリアした状態でのレビューをお届けします。

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 ハードごとに異なる体験版も絶賛配信中の『サガエメ』。本作は、常にギリギリな戦いが楽しめるタイムラインバトルと、プレイヤーの選択やクリア回数などで多彩に変化していくフリーシナリオが楽しめるRPGです。

 1周のプレイだけでは全貌を把握することが不可能なボリュームとなっており、何度でも周回プレイが楽しめます。今回は、担当ライターが御堂 綱紀(みどう つなのり)、アメイヤ アシュリン、ディーヴァ ナンバー5、ボーニ―&フォルミナ、シウグナスの6人5組の主人公全員のシナリオをプレイし、クリアした感想をお届けします。

 なお、プレイにあたっては開発中のPS5版ROMを使用しており、製品版とは異なる場合もあるのでご注意ください。

主人公ごとにプレイ時間も周回の変化も全然違う! ラスボスすらいない時もある???


 『サガエメ』をクリアしました! いや、待ってください。本当にクリアしたと言っていいのだろうか……。私には、まだまだこのゲームを遊びきったと言い切る自信がありません。おかしいな……70時間は遊んだはずなんだけど。

 いや、もう先に結論を言いましょう。今回は「もの凄く人を選ぶけれど、周回して遊べば遊ぶほどうま味が出てくるゲーム」です。なんだ、よく考えたら、いつもの『サガ』ですね。安心しちゃった。

 とにかく、周回を見越してる構造なんですよ。本当に、何度も何度も繰り返すことで世界が広がっていく。周回によって全然違ってくる選択や、世界の結末。加入する仲間の違いを楽しみ、同じ場所でも物の見え方が違ってくることに驚ける。何度も遊ぶことで深みにハマっていくのです。

 バトルでも多彩な選択肢があり、自分で1手1手考えながら運命を選び取る楽しさが詰まっています。そこに気がつくかどうか。用意された遊び場で、どうロールプレイしていくか。自分自身でどれだけ遊び込むかで、作品の見え方が全然違ってくると思います。

 逆に言うと、本作を周回しなかった場合は、かつてないほどアッサリ終わっちゃって拍子抜けするでしょう。下手すると、作品のテーマや本質を誤解したまま終わるかも!? 作れる装備も、覚えられる技も、手に入る素材も、1周程度じゃ全然集まりません。最低でも3周しないと手に入らない武器もいくつかあります。

 そもそも、戦闘を重ねるか特定の世界をクリアすることで入手できる“概念”がないと、装備の強化ルートすら全然解禁されません。ショボい装備のまま強化が途中で止まって、それでもラスボスに勝っていたりするので驚きますよ。おそらく、パラメータ自体もかなり低めで1周目を終える人が大半でしょう。本当にビックリします。

 自分は御堂編を3周、アメイヤ編を2周、ディーヴァ編、シウグナス編、ボーニ―&フォルミナ編を各1周ずつ終わらせて、この記事を執筆した時点ではシウグナス編の2周目をやり込んでいる最中。もう、記事の締め切りなので原稿には反映させていませんが、今はディーヴァ編の2周目を遊んでいます。まだまだ余裕で遊べそうだ。

 しかし、遊べば遊ぶほどわからなくなっていくんですよね……。いったい、どこまで遊べば世界を極め尽くしたと言えるのか。これが、まったくわかりません!

 プレビューの時も似たようなことを書きましたが、細かい会話の差分や展開の違い。ボスの使ってくる行動などが、遊ぶたびに変化を感じるんですよ。なんというか……これは『サガ』ですね。間違いなく、過去作と比べても尖りすぎ。初心者からガッツリとハマる人もいれば、『サガ スカーレット グレイス(サガスカ)』まで遊んだシリーズファンでも、頭に?マークを浮かべるかもしれません。

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▲なぜ、自分は今ディーヴァ ナンバー5でピザを作っているのか。何を食べたら思いつくのかわからない、シュールなイベントも満載。いや、もう基本シュールです。

 正直に書くと、最初は「このゲーム、大丈夫なのか……?」と不安を感じるところもありました。今でこそ、総プレイ時間が70時間を軽く超えるくらいハマりましたが、クセは強めです。イベント会話のスキップも早回しもなく、戦闘の高速化もない。TIPSは充実していますが、バトルの仕組みや敵の穴に自分で気がつくことが必須。

 プレイヤーを接待するような優しさはないですし、何もかも“自分で考えて選ぶ”ことが作品のテーマとマッチしています。着の身着のままでジャングルに放り投げられたような『サガ』シリーズらしい体験が潔い!

 ゲームボーイの『サガ』シリーズや『サガ フロンティア(サガフロ)』のようなごった煮の世界観。『サガスカ』のようなタイムラインバトルに、ジオラマのようなマップ。いわゆる今風のRPGを想像していると面食らうでしょう。スキャンボタンを押すと、次に行ける道が見えている作りも割り切っています。

 移動する順番を考えるグレートツリーや、すごろくのような遊びのあるアヴァロン。突然、簡易的なスキーのミニゲームが始まるグレロン。探索を削ったゲームなのかと思いきや、ボードゲーム的な遊びもあって、う~んヘン! すごくヘン!!

 散りばめられている過去作ネタも多めなのですが、前作とも遊びの感覚が違う変な『サガ』ですよ、コレ。ぶっちぎりで変なサガ!! 噛めば噛むほど美味しいけれど、ものすごく硬い。1周程度では、歯が折れそうになって口から血が噴き出しそうなくらい硬い。しかし、噛み続けるとサガでしか味わえない味がする。そんなサガ。ハマれば50時間どころか、100時間くらい平気でプレイできちゃいそうです。

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▲記事を書き始めた段階で、このプレイ状況。これを書き終えている時点では、さらに3周追加して遊んでいます。

 バトルのバランスも絶妙。楽勝難易度の敵は『サガスカ』と比べてもヌルめで初心者でも遊びやすく、終盤で戦うような敵は歯ごたえアリ。しっかりと戦略を練る楽しさが味わえます。何周しても、どれだけ鍛えても、常にこちらのパーティに合わせているかのように敵の強さがちょうど良く感じられるんですよね。

 ラスボス戦なんて毎回が死闘! 何度もあと一撃で全滅するギリギリの状況で勝ちました。タイマン状態からの独壇場(前後2マスに誰もいないと発動する1人連携技)で勝利というロマンシングな展開が、何度も起こりました。もう、何回戦っても強いですよラスボス。それでも前作の初見時や『アンリミテッド サガ』のラスボスほどは絶望を感じなかったので、程よい調整だと思います。

 シナリオは、周回や主人公によって目まぐるしく展開が変化。差分くらいの違いもあれば、最初から中身が違ったり、オチが全然違ったり……。前の周回と同じルートを狙っても、なんか違っちゃう。周回を繰り返しても、見たことがないイベントが出てくるし、新しい発見もあります。

 たとえば、今回も“乱れ雪月花”が習得できるのですが、それを覚えられる方法に気がついたのは5周目でした。もう、わけがわからない。万人受けしそうにはないけれど、万人に勧めたくなる独自性があります。

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▲ダンジョンがないのかと思いきや、世界そのものがダンジョンのように仕掛けを解く世界も。どこか、アナログなボードゲーム感もあります。

 1人の主人公をクリアする時間は平均して10時間前後。ただし、これは主人公やプレイの仕方によってだいぶ差があります。自分は初プレイで御堂編を選んだのですが、4時間でクリアして目を疑いました。

 ですが、そのまま引き継いで御堂編の2周目を遊ぶと、今度は6時間じゃ終わらないんですよ。序盤から会話も変わっているし、行ける世界も違う。ラスボス戦前の展開も違う。その後、3周目をプレイしたらまた序盤の会話が変わってて、これはスゴい。テキストどれだけ作ってるんだろう?

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▲1周目の冒頭は、叔父さんからのメッセージが。2周目では父親からのメッセージ。3周目ではまた違う人からのメッセージ……何回変わるの?

 一方、アメイヤ編を遊んだら1時間30分で終了。引き継いだとはいえ、パーティが全然違うので育成されてないのに!

 しかも、途中で選んだ選択肢が悪かったのか、猫を集めたのがいけないのか。原因不明なのですが、ラスボスに会えませんでした。どうなってるの……!?

 もしかして、今回は10時間かからずにサクッと終わるのかと思いきや、ボーニー&フォルミナ編も、シウグナス編も、ディーヴァ編も10時間以上かかったんですよね。

 とくに、シウグナス編はサブイベントを全部無視して進んだからやり込むと20時間くらいかかりそう。主人公を変えるだけでも、プレイ時間がバラバラ。そして毎回、新たな発見がある。自分、まだ『サガエメ』のことがわかりません。理解するために、今日もまた引き継いでプレイしちゃうのです。

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▲引継ぎできる要素は細かく選べます。基本はバトルランク以外全部引き継ぎでOK。バトルランクは、より厳しい戦いを求める人向け。


ダイスロールを何度も振りなおせるテーブルトークRPGのような冒険。どの主人公も魅力的!


 長めのストーリーをじっくり遊ぶか、短編集のようなオムニバスのシナリオを遊ぶか。RPGとひと口に言ってもいろいろありますが、本作を遊んでみてわかったのは、そうした普通のRPGをベースに考えるのは間違いだということ。既存のプレイスタイルには当てはまらないゲームです。

 育成をしなくてもクリアできますし、引き継いでどんどん強化しても強化しただけのやり応えが返ってくる。人によってはHP200もいかない成長度合いで終われば、パーティメンバー全員がHP500を超えてる状況で1周目が終わる人もいるでしょう。

 数時間程度遊んで、1周クリアするだけで満足しても良し。50時間くらいかけて何周もして、世界の深みを知るのも良し。プレイヤーによっても遊ぶ回数が違ってくるのではないでしょうか。

 17個ある世界をどの順番でプレイするのかも、プレイヤーの自由。いや、自由どころかプレイによってはメインルートで行かない世界が大半だと思います。サブイベントでも全部巡れる主人公と、そうじゃない主人公がいるような。

 周回しても連接領域に入るまで、どの世界が出てくるのかよくわかりません。入ってもヒント程度の表記でよくわからなかったり、主人公によっても表記が違ったり……。1周目の御堂編で「また会いましょう!」と分かれた仲間たちとは、2周目だと再会すらできませんでした。そんなことってある!?

 同じ世界に行ったとしても、同じ展開が待っているとは限りません。違うイベントが始まることもあれば、同じイベントでも選んだ選択肢やアイコンの順番でオチが変わります。主人公によっては反応どころか展開まで変わります。それどころか、同じイベントでも“巻き戻し”をすると結果が変化する場合も。

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▲選択肢を選びなおすことで戦闘の有無や、もらえるアイテム、会話の流れが“巻き戻し”を行なうと変化する場合も。同じイベントにもランダム要素が……!?

 テーブルトークRPGを可視化したようなゲームスタイルでもあり、ダイスロールを自分で好きなように振りなおしつつ遊んでいるようなプレイ感。RPGの常識やお約束にまったくとらわれていませんね。保守的になりがちな今の時代。よくここまで尖らせてきたな、と驚くばかりです。

 おそらく、何周もしたほうが楽しめる作品なのは間違いありません。ちなみに、もし1周だけしか遊ばないとするなら、シウグナス編をオススメします。シウグナスはLPを消費する代わりに、反則級な性能の“ブラッド技”を使えるのが本当にズルい。たぶん、主人公の中では最強ですよ。

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▲このゲームのルールにおいて、スタンや即死の確率が高いブラッド技はある意味で反則。自分は“ブラッドテクニック”をよく使いました。

 仲間を眷属にすればするほど自分のLPが増えていきますし、イベントを終えて関わってきた人と会話するだけでもLPをゲット。今回はワールドのクリアやロールによる効果など、LPの回復手段が豊富なので、ブラッド技を気軽に使えます。さらに、シウグナス編でのみ手に入る“ブラッドギア”という装備品が、これまた輪をかけて強い。

 このシナリオ専用なので引き継げないですし、作成に使う素材もエグめで作るのは大変です。その分、性能がおかしい。攻撃力40くらいの武器が作れる段階で70越えの武器が手に入ったりします。

 素材がレアなので周回しないと作れない可能性もあるのですが……そこを差し引いてもブラッドギア強すぎ! ギア自体にLP回復効果がついていますし、仲間を眷属から騎士に格上げすればブラッドギアを分け与えることも可能。最終的に、ほかの主人公とは比較できないくらいの強パーティになります。ラスボス戦もブラッド技のおかげで有利に戦えました。

 それから、シウグナス編は仲間たちの過去が語られる専用のイベントがあり、これがなかなか良いシナリオなんですよ。初期メンバーに愛着が湧くので、個人的にも好きな主人公ですね。

 ただ、シナリオで言えばボーニー&フォルミナも捨てがたいんだよな……。2人の掛け合いが魅力的なんですよ。最初は仲間が猫ばかりですし、序盤は(正確には違いますが)一本道的な感覚。途中で一気に自由度が上がるまでは縛りプレイに近いのですが、シウグナスとは対照的に仲間を次々と入れ替えていく楽しさがあります。

 キャピトルシティでの大統領関連イベントも、彼女たち専用っぽい。シウグナスだけ仲間に出来るのかは未確認なのですが、周回していけば主人公たちを全員揃えられそうな感じもするので、シウグナスと合わせてやり込み向けの主人公にも見えます。

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▲キャピトルシティは、ほかの主人公だと訪れる機会がなさそう。行く方法すらまだわかってません。ボーニ―たち以外で行けるのでしょうか?

 いやでも、シナリオなら仲間たちとの関係が良く、ラスボス戦の演出が一番熱いディーヴァ編も推したいな~。メカが多く仲間になるので、パーティ自体がとてもタフです。メカは、装備が良いほどパラメータが高くなる。つまり、引き継ぎできる2周目以降で真価を発揮するんですよ。先に、ほかの主人公を遊んでからでもいいかも。

 ただですね。良い意味でも悪い意味でもサプライズがあるというか……。自分は悪いほうのサプライズに引っかかってすごく苦労したので、そうした意味でも忘れられない主人公ですね。ヒントは『サガフロ』。これだけで、わかる人はわかりそう。

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 初心者に推すなら、やっぱり御堂編でしょうか。周回するたびに、導入と終盤の展開が大きく変わりますからね。3周してもまだまだ変わります。自分のように何周も遊び続けるつもりなら、1周目を御堂編からやるのがオススメ。1周目では世界観がよくわからず終わりますが、だからこそ次が気になって周回したくなるはず。妹は仲間にできないのか、それが、ずっと気になって周回してしまう!

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 アメイヤ編は、1周目だと1本道のような体験です。メインイベントの誘導が強く、そうした意味でも初心者向けかな。冒頭でも書きましたが、選択しだいではラスボスすら出ずにサクッと終わるのは逆に利点かも。ほかの主人公だと、ラスボスに勝てなくて強化する人も多そうですから。

 あとは、単純にアメイヤが術使いとして強い! 全体攻撃+リザーブ解除の効果がついた術も多く、終盤では非常に強力です。周回すればするほど術のありがたみがわかるので、術のチュートリアルみたいなシナリオですね。アメイヤ編だけを遊んだら、本作を誤解しそうなくらいには特殊です。

 ほかの主人公でプールクーラに行くと仲間にできるので、先に遊んで術要因として鍛えておくのも手です。ただし、アメイヤ自身で周回するとネコ集めの知力は遊ぶたびにリセットされます。自分がラスボスと戦えなかったこともあるのですが、いろいろと分岐しそうな主人公です。

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敵の強さが常にちょうどよく、いつまでもグルグルと遊べてしまいそうなバトル


 プレビューの記事でもお伝えしてきましたが、本作でもっとも長く付き合う要素であり、楽しみでもあるのがバトル。BPを使って技や術を使い、相手の行動を阻害して連携を繋ぐ。基本的なシステムは『サガスカ』を踏襲しているのですが、遊んでみると別物です。

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 基本的にはタイムラインにある緑の線を繋げて連携を発動させつつ、敵の赤い線を邪魔して連携を発動させない。これさえ意識していれば序盤は勝てます。中盤以降はやっかいな状態異常やら全体攻撃やら、もう無茶苦茶。どうやってスタンさせるか、ヤバい状態異常をしのぐか、考えることが増えまくり。自分のように、このバトルシステムが好きな人にはたまりません。

 数ターン先の展開を見越してバフや術の準備を仕込む。スタンやリザーブ解除効果のある技で敵のターンをスキップさせながら体力を削る。考えることは、いくらでもあります。パズル的だった前作よりも選択肢が多めで、戦略を考えながら戦うのが本当に楽しい!

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▲戦闘中に復活させる手段がないのに“即死”や“石化”があるという事実が、まずヤバい。ボタン連打じゃ絶対勝てない!

 たとえば、メカ麻痺以外の状態異常が効かないメカに仲間を守らせる。ガードばかりする敵に防御力無視の攻撃を叩きこむ。相手によって立ち回りを変える必要があります。

 頭を使う必要はあるのですが、見た目もゴチャゴチャしていませんし、数値のやり取りもシンプル。とても遊びやすいバトルです。自分で試せば、やりたいこと、やれることがどんどん出てきますよ。

 だからこそ、勝てそうで勝てない状況で負けるのが悔しい! 大ダメージでスッキリ爽快には戦えませんし、1つの術だけぶっ放していれば勝てるわけでもない。事前準備で技や術を入れ替え、臨機応変に対応する必要がある。1戦が重くて疲れるのですが、心地よい疲れですね。パズル的な楽しさは『サガスカ』以上。フォローやチェイスなどを駆使して連携を繋いでいく楽しさは、ほかにはないバトルです。

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▲位置取りを間違えて敵の独壇場が発生すると、ああ終わったな……となります。戦闘は、毎ターン考えることが多い!

 バトルの前に難易度がわかるのですが、通常の“楽勝”や“普通”なら『サガスカ』よりもはるかに楽でしょう。その代わり、ボス戦は考えないと勝てません。メリハリが利いていて遊びやすいですね。“せんせいの試練”という装備の強化素材がもらえるミッションをこなすうちに、どんな行動が便利なのかも自然と理解できます。

 全体的に程よい手ごわさがずっと続くんですよ。楽勝になりすぎず、かといって初見で無理なほど絶望的じゃない。引き継いでも、鍛え続けても、常に程よいバランス。

 ちゃんと考えて戦っていけば、赤いアイコンを選ぶと挑めるフリーバトルも、いっさいやらずにクリアできます。自分はこれだけ周回してもフリーバトルはしていません。1回のバトルでゴリっと成長しますし、どんな育成、どんな強さ、どんなパーティでもギリギリ勝てるようになっているんですよね。だから、何周しても戦闘が飽きないんですよ。

 周回すればするほど、何をしようか、次は誰で遊ぼうかと、いろいろと考えながらプレイできます。短いサイクルで、延々と周回して延々と戦う。グルグル遊び続ける作りですね。

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 心の赴くまま、好きなだけ周回できるのが『サガエメ』。与えられた周回ではありません。全部の主人公をクリアしたところで豪華なムービーもありません。天翔ける翼も流れない。

 だからこそ、どこで止めるのかは自分しだいなのです。ヒューズ編が出るとか、開発室が出るとか、そういうオマケもいっさいなし。与えられたご褒美がないのです。提供された場で、好きなだけ遊ぶ公園の砂場のような感覚。尖っていますが、RPGの本質を考えさせられます。こんな変わり種があってもいい。いや、むしろ変わり種だからこそ良いのでしょう。

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▲育成のサイクルも作れる装備も、周回して引き継げば引き継ぐほど選択肢が増えます。

 周回で引き継ぎ、より高みを目指す。装備やパラメータをどんどん鍛えていく。新たな強化が解禁されていく。知らないイベントが出てくる。そのサイクルを楽しむ。これこそが、本作の魅力であり、すべてかもしれません。

 ただ、だからこそ戦闘の倍速や会話の早送り。スキップが出来ない点はちょっと気になるかも。かなり好みのゲームではあるのですが、流石に9周も周回していると飛ばしたくなる会話やイベントもあるんですよね……。そうした部分で、ユーザビリティがやや気になる面はありました。とはいえ、ゲームの根本は魅力たっぷり。

 ほかのRPGでは絶対に体験できない、『サガ』特有の妙味が存分に味わえます。常に考えて遊ぶ楽しさがある。RPGの根本的なエッセンスを凝縮した本作に、少しでも興味が湧いた人なら長く楽しめるでしょう。

 とにかく、まずは1周して首をひねってください。あまりにもさっぱりした作りに、きっと首をひねる人が大半だと思います。しかし、そこでなぜか2周、3周と続けたくなった。そんな人は、深みにハマること間違いなし! やればやるほど、遊び方や楽しみ方がどんどんわかっていきます。

 ガイドラインだらけのRPGとは、真っ向から対立するようなそぎ落とし方。自分はものすごく好きな『サガ』ですが、合わない人には合わない。万人受けもしないでしょう。ですが、普通のRPGに飽きている人やゲームに新しい楽しみを求めている人、ほかとは違う刺激が欲しい人、変わった体験をしたい人には、ぜひオススメします。

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