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2019年3月29日(金)

新作恋愛シミュレーション『ラヴアール』を届けるために! 開発秘話やコンセプト、今後の予定を杉山Pが語る

文:kbj

 角川ゲームスから発売中のPS4用ソフト『LoveR(ラヴアール)』。本作を手掛けた杉山イチロウプロデューサーへのインタビューを掲載します。

『ラヴアール』

 本作は、オリジナル恋愛シミュレーションを作り続けてきたプロデューサーであり、シナリオを担当してきた杉山イチロウさんと、ゲームを始めとしたさまざまな媒体で多数のヒット作を生み出してきた箕星太朗さんによるタイトル。女の子と恋を進めながら、思い出の写真を撮ることができます。

 杉山さんには、ソフト開発のコンセプトやそれぞれのキャラ、発売後の反響や今後のダウンロードコンテンツについて、質問。ソフトを楽しんでいる人だけでなく、気になっている人もぜひご覧ください。

『ラヴアール』
▲杉山イチロウさんは、『トゥルー・ラブストーリー』に始まり、『フォトカノ』や『レコラヴ』など、20年以上恋愛シミュレーションゲームをてがけてきた。

“撮影”することで“恋”を作ることができる!

――改めてになるのですが、本作のコンセプトは?

 “純愛”と“写真”、この2つが大きなコンセプトになります。女の子と恋をして、自分にしか撮れない写真を撮る。笑顔も、はにかんだ微笑みも、時には涙も……忘れられない写真をアルバム一杯に残してほしい。開発スタッフ一同、そんな思いで作りました。

 あと、箕星さんと新しい恋愛シミュレーションを作るうえで決めたことなのですが、原点に帰るということです。前作の『レコラヴ』が、明るく開放的な雰囲気だったので、もっと叙情的なところに戻ろうと。クリスタはその典型で、ゲーム全体をウェットな方向に引っ張ってくれています。凜世も『レコラヴ』より少し落ち着いた雰囲気になっています。もっとも、僕としては『レコラヴ』も大好きでして、誇れる作品だと思っています。しんみりするところは少ないですが、未体験の方はぜひ体験していただきたいです。

――据え置き機ハードでの恋愛シミュレーションゲームは久々だったと思うのですが、いかがでしたか?

『ラヴアール』

 やはり大きな画面に女の子が映るのはいいなぁと(笑)。小さな画面とはドキドキ感が違います。撮影の臨場感も、DUALSHOCK4のモーションセンサーを使うことで違和感なく実現できましたし、言うことなしです。

 ただ、どこでも遊べるという利便性と、携帯ゲーム機を実際のカメラのように見立てての撮影という要素との、トレードオフではありましたが。

――ハードが変わったことでの苦労はありましたか?

 PS VitaからPS4になったことにより、性能が格段にアップしました。大画面に映ることもあり、ビジュアル面の強化が大変でした。PS Vitaでは生のポリゴンを表示することしかできなかったのですが、PS4では複数のシェーダーがかけられて、ライティングも凝ることができる。

 僕自身に経験がないので、できあがったキャラモデルが最終的にどういう見え方をするのがよくわからず、戸惑いました。今のビジュアルがあるのは、アートディレクターの九印-quin-さんとグラフィックスタッフの皆さん、プログラマーの皆さんのおかげです。

――『フォトカノ』、『レコラヴ』、本作と、写真や動画をテーマにした作品をリリースしてきましたが、こちらの理由は? 撮影のどこに魅力があると感じていますか?

『ラヴアール』

 “撮影”という要素があることによって、ユーザーの皆さんが自ら恋を“作る”ことができると思っています。こちらが用意したビジュアルとシナリオを読むだけではなく、自ら女の子に迫って、撮る。そこに物語が生まれているんじゃないかなぁと。

 本作では音声入力を導入して、撮影中の女の子のリアクションを大幅に増やしたので、より感情移入しやすくなっていると思います。恋愛シミュレーション自体、実際にはあり得ないような恋を、なるべくリアルに体験してもらうことが大切だと思っているので、現実には撮れっこない写真が、学園中いつでもどこでも撮れる“撮影”という要素は欠かせないものになっています。3Dキャラの魅力は年々アップしていますし、これからも追求していくつもりです。

それぞれ人気で、それぞれ特徴的なキャラ

――各キャラのコンセプトを簡単にお話いただけますか?

『ラヴアール』

 篁莉里愛は、これまで僕が作ってきた恋愛シミュレーションの中で、初の年上のメインヒロインです。基本はあくまで王道ヒロイン。一見すると何事も完璧な学園の憧れのマトです。そこに、決して完璧じゃない等身大の女の子としての魅力が見え隠れするようになっています。見た目と違って、ジワジワくるヒロインだと思っています。

『ラヴアール』

 日向寺南夏は、真夏の象徴みたいなイメージで作りました。いつも明るくて、楽しくて、ノリがいい。話しやすい感じを出したくて、雑な口調と、サッパリした性格にしてあります。アドベンチャーパートで動きが多く、見ていてとても楽しいキャラです。「うちの開発スタッフってすごいなぁ」って思いました(笑)。

『ラヴアール』

 生野C香澄は、綺麗でおとなしい年下の女の子です。未熟な感じを出したかったので、ストーリーは殻を破れない心の内面を描いています。写真が趣味でもありますし、『LoveR』ならではの子になったのではないかと。発売前、人気が上がらずハラハラしましたが、今では大人気で“ラヴアールフォトコン”でもたくさんの写真を投稿いただいています。エッチな写真が少なくて綺麗な写真が多いのは、彼女の無垢な魅力の賜物だろうと思っています。

『ラヴアール』

 仲座ろみは、ストーリー的に一番凝ったキャラです。他のキャラの1.5倍ぐらい文量があります。彼女の夢を描くために、これでもか、これでもかとエピソードを詰め込みました。上から目線で自己中心的だけど、真剣な彼女を見ると許さざるを得ない……そんな子です。

『ラヴアール』

 姫乃樹凜世は、等身大の小5を大切に描いています。甘々な子じゃなく、いい子でもない。生意気で、素っ気なくて、意味なく笑うのが嫌い。こう並べると「どこが魅力なの?」と思ってしまうかもしれませんが、そこが魅力なんです(笑)。現実では絶対に起こりえない恋ですし、もっともゲームらしい純愛ストーリーじゃないかなぁと。

『ラヴアール』

 優美菜は、これまで僕が描いてきた歴代妹の中で“最強の積極ヒロイン”です。なので、やり過ぎギリギリのところまで兄のことが大好きです。多分、『LoveR』が第1作だったとしたら、ここまで攻めた妹は描けなかったと思います。長年、妹を描いてきた経験があったからこそ、つねにグイグイ来る優美菜を生み出すことができた。そう思っています。

――それぞれの人気はどうでしょうか?

 おかげさまで、みんな人気があります。プレイヤーの皆様、それぞれに好みがありますし、推しキャラが違う感じです。

――先ほどもありましたが特徴的なセリフのキャラが多く(特に優美菜)、会話がおもしろい(特に優美菜)と感じたのですが、特徴のあるセリフを作る際のポイント、意識していることはなんですか?

『ラヴアール』

 優美菜の場合は、妹ということもあり、心情をストレートに表現することが多いです。なので、兄のことが好きすぎるところがすぐ表に出るので、おもしろいのだと思います。

 凜世の“事案”とか、クリスタの“ポエム”とか、キャラの特徴的な言葉やシーンは、定期的に織り込むようにしてます。

――Twitterで開発初期と終期の比較画像を公開されていましたが、開発中に大きく変わった、進化した仕様などはありますか?

 いやもう、なにもかもぜんぜん違います。正直なところ、開発スタッフ全員、PS4の開発経験があるわけではないので、ひとりひとりの個人スキルと、長年の開発経験で試行錯誤しながら作っていました。

 方針としては“写真”がテーマですから、さまざまなアングルから見た時に、光も影もちゃんと動いて、違う表情を見せるように作ろうということになるのですが、なかなか難しくて……。九印-quin-さんとプログラマーさんがギリギリ最後まで粘って調整してくれて、今のビジュアルができた感じです。背景も、UIも、イベントシーンも皆が頑張って、いいものに仕上げてくれました。

『ラヴアール』 『ラヴアール』
▲初報時のゲーム画像。▲開発終盤のゲーム画像。

――スタッフロールを拝見して、かかわられているメンバーの数の少なさに驚いたのですが、このメンバーで開発できた秘訣はなんでしょうか?

 全員、僕の過去作を作ったことがある経験者で、技術を持っていますから、効率がいいんです。ビジュアル面は試行錯誤でしたが、ゲームシステムを組み上げるのに試行錯誤が少ない……僕は変える必要がないところは変えないんです。

 ゲームシステムを丸ごと変えたら、試行錯誤が始まって、開発コストが膨大になってしまう。作り直しがコスト上、一番ダメージを与えますから。とはいえ、もう少し開発スタッフが欲しいところではあります。けれども、市場を考えると難しいところです。

――リアルな動き、モーションばかりで、動きを見ているだけでも楽しいと感じたのですが、どのようなところを意識されましたか?

 体操や新体操、ダンスシーンはもちろんのこと、水鉄砲を撃ったり、ストレッチしたりするイベントシーン、フォトセッションのアクションでも、モーションキャプチャーを多用してます。VTuber(Vチューバー)のマジカルユミナもそうですが、アクターさんの演技をキャプチャーした方が、動きがリアルですから。

 『フォトカノ』のころと比べてモーションキャプチャーのコストが格段に下がったからできることです。いい時代になりました。

――学校をはじめとするロケーションの中で、もっともこだわっているスポットは?

『ラヴアール』

 伝統的な校舎と、新しい設備が混在している感じを九印-quin-さんにお願いしました。彼が作ってくれたラフデザインをもとに、背景担当のグラフィックスタッフがきっちり作り込んでくれているのですが、中庭に驚きました。ギリシャ庭園みたいな噴水があって、「これはフォトジェニックすぎじゃないか」と(笑)。あと、プールの壁はアクリルで透明にしてもらいました。現実ではあり得ないのですが、ただの壁を撮ってもつまらないので。

今後の予定は!?

――本作を手掛けてきて、うれしかったこと、大変だったことをそれぞれ教えていただけますか?

 うれしかったのは、なんといってもユーザーの皆様の反響がよかったことですね。とても楽しんでいただけたので、励みになってます。

 大変だったのはスケジュールです。毎回、余裕のあるスケジュールを組めないのですが、今回は初めてのハードということもあり、いつも以上に厳しかったです。マジカルユミナも休まず週イチ更新を続けましたし、過酷でした。

――熱量の高いユーザーが多い印象ですが、発売後の反響はいかがでしょうか?

『ラヴアール』

 女の子も、ストーリーも、撮影も大好評で、とてもうれしいです! PS4唯一の新作恋愛シミュレーションですし、待っていましたという感じになっているのではないでしょうか。

――公式サイトのロードマップで追加されるものなどが出ていましたが、それぞれについて簡単に説明いただけますか? ますはショップに追加されるものは?

『ラヴアール』

 撮影中に使えるアクションや、アクセサリーが増えます。

――録画機能追加とはどういうですか?

 『レコラヴ』と同じで、ゲーム中のアルバムに動画が保存できるようになります。カメラのUIなしの動画を録れるので、動く女の子を録りたい人にはありがたい機能だと思います。

――新規コスチュームのヒントは?

 季節にちなんだものを出していきたいと思ってます。

――フォトコンが盛り上がっているようですが、こちらはいかがですか?

 毎日たくさんの投稿をいただいて、本当にうれしいです。こちらが想像もしてなかった背景やカラーレンズの使い方があって、驚いています。美しい写真から、きわどくてRTできないような写真まで、本当にバリエーションに富んでいて、見ていて開発した自分たちも飽きません。

――写真をうまく撮るコツ、ポイントはあるのでしょうか?

『ラヴアール』

 単純にたくさん撮ることだと思います。ゲーム中で主人公も言ってますが、撮れば撮るほどうまくなるので、がんばってチャレンジしてほしいです。あとは、女の子の魅力を引き出したいという想いが大事だと思います。

――最後に、まだやっていない人、楽しんでいる人へ、それぞれメッセージをお願いします。

 まだプレイされてない方はきっと、恋愛ゲームに興味がないか、興味があっても写真に興味がない方だと思います。けれども、漫画も、小説も、映画も、みんな恋愛要素なしには成り立たない。ぜひゲームでも恋愛を体験してほしいです。ゲームの場合、インタラクティブ性が高いので気恥ずかしく感じるかもしれませんが、その分、のめり込めます。写真に興味がない方は、プレイしてみると恋と写真がうまく絡んで、いつの間にか女の子を撮ることが好きになると思います。

 プレイされてる方は、今後のアップデートやDLCに期待してください。よき純愛フォトライフを送れるように、開発スタッフ一同、尽力して参ります。『LoveR』を楽しんでくださって、本当にありがとうございます!

(C)2019 KADOKAWA GAMES

データ

▼『電撃PlayStation Vol.674』
■プロデュース:アスキー・メディアワークス
■発行:株式会社KADOKAWA
■発売日:2019年3月28日
■定価:879円+税
 
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▼電撃コミックスNEXT『LoveR 1』
■著者:カズヲダイスケ
■キャラクターデザイン:箕星太朗
■原作:角川ゲームス
■発行:KADOKAWA
■発売日:2019年3月27日
■定価:本体680円+税
 
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