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2019年3月26日(火)

『ウイニングポスト9』レビュー。新しい『ウイポ』は馬の個性がさらに深く多彩に表現されライバル対決が熱い

文:キャナ☆メン

 コーエーテクモゲームスが3月28日に発売するPS4/Nintendo Switch/PC(Steam)用ソフト『Winning Post 9(ウイニングポスト9)』(以下、ウイポ9)のプレイレポートを掲載します。

『ウイポ9』

 『ウイポ9』は、オーナーブリーダーとして自分だけの競馬史を築いていく競馬シミュレーションゲーム『ウイニングポスト』シリーズの最新作です。

 本作では、ライバル対決や絆コマンドといった新要素が搭載され、馬場適性には競馬場による芝質の違いが導入されるなど、さらに多彩な要素がプレイに影響するようになっています。

 また、レースや競走馬は2019年の最新データに対応している他、レースシーンが強化され、雨に濡れた馬体やダートで砂を被る様子など細かな表現まで追求された見応えある走りを楽しめます。

『ウイポ9』
▲わかりやすさを重視して勝利後の画像ですが、ダートレースを走ると、レースの途中から馬が砂を被って泥まみれに。本作は、アップでグッとくるレースシーンの表現になっています。

ライバル対決が熱い! 激戦の記録は愛馬の引退後にも影響する

 プレイした中で一番おもしろく感じた新要素はライバル対決です。現役時代に築いたライバル関係は繁殖入りしてからも影響があるので、プレイを通じて愛馬の個性に華が添えられ、とにかく熱い。

『ウイポ9』

 ライバルの発生条件は割とゆるめで、勝利を巡って接戦を繰り広げると、それほど意識せずともライバル関係が成立する仕組みになっています。

 ライバルが成立した後は、相手陣営が反応するようになり、時には駆け引きが発生して実にリアル。同じレースでぶつかって勝利すると、さまざまなメリットを得られます。

『ウイポ9』
▲血筋や陣営の背景による“エリートVS雑草”のような、周囲の評判によってライバル関係が成立することもあります。
『ウイポ9』
▲レースでライバルに勝つと育成度が上がり、繁殖能力ボーナスが増えます。強いライバルに勝つほどメリットが高まる仕組みですが、それだけではなく……。

 ライバルは1頭と限らないものの“ライバル度”という概念が存在し、ライバル同士で接戦を繰り広げて片方が勝利した時だけ、ライバル度が上昇して“こいつは特別な相手だ”というのが実感できるシステムになっています。また、複数のライバルで同時に競う状況を見てくれているのもいいところ。

 筆者の体験を例に出せば、自家生産した馬が2004年の日本ダービーをキングカメハメハ、ハーツクライらと争い、何と1着・2着・3着の大接戦に! 双方とライバル関係であったため、ライバル度がそれぞれに上昇して、胸が熱くなるドラマチックな展開と愛馬のメリットをもたらしてくれました。

『ウイポ9』
▲ライバルに勝てば育成度と繁殖能力ボーナスの上昇効果は得られますが、1着・2着のような接戦でないとライバル度は上がりません。実にニクイ仕様で燃えます。
『ウイポ9』
▲年間で1番熱い対決の行われたレースは表彰されますが、上記の日本ダービーは、3つ巴の戦いであることも評価されてその年の最優秀ライバル対決に選ばれました。

 ちなみにライバル度は、新しい配合理論である“ライバル配合”や“ライバル配合母父”の成立に影響します。

 ライバル度が高いほど爆発力が上がるため、現役時代に激闘を繰り広げたライバル同士の血が1つに混ざって超大物が生まれる……なんて感動すら覚える展開も起こり得ます。生憎、そこを体験する前に原稿執筆タイムが来ているのですが(苦笑)。

『ウイポ9』
▲キングカメハメハと幾度も接戦を繰り広げた愛馬。キングカメハメハの子に種付けするか、この馬の子にキングカメハメハを種付けするかで“ライバル配合母父◎”が成立します。
『ウイポ9』
▲別の馬の例ですが、ライバル配合母父が成立するとこんな感じに。もし牡牝混合のレースで競えば直接ライバル配合が成立します。

あの人は今? 新たな出会いとシステムを楽しめる“人々との絆”

 ナンバリングが替わったことで、多くのキャラクターが転身を遂げている姿を見るのは楽しみの1つ。

 一部の人物を例に挙げると、朝比奈すみれは初期選択できる牧場長に、青葉エリカは欧州の競馬コーディネーターに、天城綾は馬主に職を変えています。他にも意外な人が意外な転職をしていたり、なるほどと思える転職をしていたり。シリーズを遊んでいる人は、知人たちの新たな姿を楽しめるでしょう。

『ウイポ9』
▲我らが有馬桜子さんは、有馬シンクタンクの代表としてオーダーブリーダーの開業を助けます。「大切なのは人との絆」がモットー。
『ウイポ9』
▲みんな大好き(?)如月英里子さんも職を変えて登場。意外と思いつつも彼女の美貌なら納得できる職業を目指して奮闘中。プレイヤーとはアメリカで出会います。

 さらに、地方競馬場でおなじみの天本恭子や獣医の高松凱旋の血縁者も新たに登場し、馬主同士のライバル対決には、気鋭の若手や貫禄ある古豪といった風の個性豊かな新キャラクターたちが参戦しています。

 自信満々で勝負を挑んでくる割に、相手の馬が弱い……というのはご愛敬なのですが、1番格上のライバルだと銀のお守りを入手できるのはうれしいところです。もっとも時代が未来に突入すると、彼らも侮れない相手になるかもしれません。過去の年代でさえ、史実馬を尻目にライバル馬主の所有馬がGIを取ることもあったので。

『ウイポ9』
▲高松凱旋の娘で父同様に獣医である高松歌劇。故障を克服して結果を出す必要があるのでイベントを見るための難易度が高いです……。
『ウイポ9』
▲プレイヤーの馬主生活に彩りを与えてくれるライバル馬主。彼らの名声を追い抜くこともプレイの目標の1つになっています。
『ウイポ9』
▲鳳雅輝や織月和佳奈など従来のライバル馬主も登場し、新キャラクターたちを破った後は彼らとも対決できます。

新要素“絆コマンド”について

 知人やライバル馬主、調教師ら競馬関係者との交流については、本作の特徴として新要素の“絆コマンド”が挙げられます。

 特定の条件を満たした場合やレースの勝利後などに、彼・彼女らと絆を育むイベントが発生し、この際、相手に応じた絆コマンドを入手できることがあります。

『ウイポ9』
『ウイポ9』

 絆コマンドを入手すると、月に決まった回数だけ、特殊な効果を発生させるコマンドを使用可能。使いどころ次第では、愛馬の勝利をたぐり寄せたり、将来の布石を打ったり、自分のプレイで流れを呼び込むことができます。

 絆コマンドは、そこまで強力すぎる効果は持たないですし、人間で言うならば“背中を後押しする”くらいのバランスなので、便利すぎずに要所で自分の行動が流れをつかむ実感を持てるのは楽しいです。

 ただ、『ウイポ』はこれまで想像力で補う部分が大きいゲームでもあったので、人によってはシステマチックであると引っかかりを感じるかもしれません。一方で、見守るパートが多いと思っていた人は、わかりやすいゲーム要素だと感じるでしょう。

『ウイポ9』
▲自牧場で繁養する種牡馬に種付け依頼が増えるようにPRするという、おもしろい絆コマンドもあります。リーディングサイアーを狙うなら大事なコマンドになりそう。
『ウイポ9』
▲強力ではないとはいえ、接戦になりそうな状況で絆コマンドを使うと、その一手が勝敗を分けることもあります。その一例も後述します。

 また本作は、調教師や騎手など他の競馬関係者と新たに面識を持つ方法も絆コマンドがメインになっています。しかも名声によって知り合えるキャラクターが限られているため、中堅以上の人物や最初から実名登録された騎手の面識を得られるまで、かなり苦労するんですね……。

 新人が人脈を築くのに苦労する点はリアルなのですが、ここしばらくの『ウイポ』に慣れている人だと、自由度を制限されたような気分になる可能性もあるはずです。そのぶん、基本的には新人の騎手や調教師をイチから育てることになるので、自分と周囲が一緒に成長していく楽しさはあります。「○○はわしが育てた」とドヤ顔できるのも、『ウイポ』の醍醐味の1つですしね!(笑)

『ウイポ9』
▲縁の馬のシステムは健在なので、縁の馬に絡んで調教師が幼駒の入厩先として立候補してくれることもあります。この場合、名声に関係なく面識を得られます。
『ウイポ9』
▲なお、本作も騎手を育てるのは大変ですが、絆コマンドを使うと少し育てやすくなっています。

馬の個性をより深く多彩に感じられるように

 ここからは、新要素である芝質の適性や闘志などを含めて、馬の能力がどのようにレースへ影響するかといったプレイに直結する部分の感想を書いていきたいと思います。

 ただし、今回の事前プレイは難易度ノーマルを選択して期間が約15年ほどと、『ウイポ』基準でやり込みと呼ぶには程遠い状況です。そのため、曖昧な部分があったり、間違いを含む可能性があったりすることはご了承ください。それでもナンバリングの切り替わりでプレイ感は少し変わっているので、早めにゲームに馴染むための一助になれば幸いです。

『ウイポ9』

 『8』シリーズに入ってから、スピードとパワーだけでなく馬の能力全般がレースの勝敗に強く影響するようになりましたが、『ウイポ9』ではスピードの絶対性がさらに見直され、プレイの体感として多彩な要因が勝敗に影響する傾向が強まっています。

 騎手はもちろんのこと、総合的な能力と相手や展開次第では、スピードDでもうっかりGIに勝つことがあり、Eなら重賞で勝ち負けになる馬も珍しくはありません。スピードCの大物などはうっかりどころか十分にGIを狙え、海外GIも獲れることがあります。ただこれは、ノーマルの難易度自体が下がっていることも考えられます。

『ウイポ9』
▲晩成で育成効果が上乗せされたこともあり、5歳間近になってから勝ち始めて複数のGIを獲った馬。有馬記念は毎年いいところなしでしたが、他のレースでは、賢さのおかげか安定して掲示板に入っていました。
『ウイポ9』
▲逆にこちらは、力押しで結果をもぎ取った感がある馬。スピードはAですが早めに大舞台・海外遠征・直一気が取れたので、評価ランク以上に強かったのかもしれません。

 スピードだけが低い大物級のような馬が『8』より結果を残しやすい感触はあったものの、それでも当然スピードが高いと安定して勝ちを拾えるので、依然としてスピードが重要な能力であることは確かです。

 また、レースに対して影響が強いと感じるのは、芝質の違いを表現した馬場適性で、適性が合わないとスピードを含めて能力が高くても重賞で苦戦することがあります。逆に、重い芝の適性を持っている場合、日本で走らせるより欧州で走らせるほうが活躍できる感触もありました。

『ウイポ9』
▲大物だけどもスピードが低く日本で芝が合わないので、思い切ってヴェルメイユ賞に出したら勝ててしまった馬。スピード能力以外の高さと、芝質の適性が効いたのかなと。
『ウイポ9』
▲芝質の適性が極端な例。日本での活躍は望めないと思い、2歳から海外に挑戦させたところ、GIとGIIIをそれぞれ1勝しました。ただ柔軟性が低すぎて3歳時は全敗。

 もし日本ダービーを勝ってそのまま欧州3冠を狙う、みたいな目標を立てた場合、おそらく本作は実現がかなり難しくなっているでしょう。配合次第で芝質の適性はかなり広くなるので、計画的な配合と運が必要になってくると思います。

 また、文字通りの意味合いで馬の能力を上下する“闘志”は、調子よりも能力を左右する度合いはやや低めに感じますが、ライバル対決の導入で接戦を制することの重みが増している本作では、僅差で競っている相手がいる時ほど闘志が効いてきます。

『ウイポ9』
▲トゥザヴィクトリーとオークスを争い、惜しくも敗れたレース。
『ウイポ9』
▲ロードして、新要素の絆コマンドで闘志を上げて挑んだところ……。
『ウイポ9』
▲ゴール前の激しい叩き合いになって、辛くもハナ差で勝利。ただし、1着・2着がこうした接戦である状況だと、ランダムで勝敗が変わることがあります。

 闘志はレースに出ると上がっていき、放牧すると下がります。また、ライバル対決の勝敗によっても上下します。レース直後に短期放牧を入れると調子の維持がラクなのは変わりませんが、目標レースに向けて放牧の頻度やタイミングを調整すると、闘志も含めて馬を最高の状態に持って行きやすいでしょう。

 また、調子を上げる絆コマンドは入手機会が多いので、積極的に絆コマンドを使っていくと、調子を二重マルにすることはさほど難しくありません。ただし、馬が海外遠征している間は絆コマンドを使えないので、レースの2週間前までに対処しておく必要があります。

『ウイポ9』

 まとめとしてのプレイ感を書いておくと、新要素だからなのか芝質の適性がやや効き過ぎる嫌いはあるものの、全体としてはすべての能力に価値を見出せる感があり、馬の個性をより深く多彩に感じられると思いました。レースもおもしろいですが、配合がワクワクしますね!

新規ユーザーにはより丁寧に、しかしゲームに関してはより奥深く

 『ウイポ9』は、過去作を遊んでいる人がゲームに触れると、導入部だったり、導線のわかりやすさだったり、初めてプレイする人向けの配慮を感じるところがいくつもあるはずです。

 一方で、ゲームの核である配合や馬の能力に関するところは、上でも説明したようによりディープになっています。これまでと同様に派生シリーズが続くなら、新規ユーザーにはより丁寧に、しかしゲームに関してはより奥深くというのが、『ウイポ9』の土台なのでしょう。

『ウイポ9』

 ナンバリング1作目の宿命として、削られたゲームシステムも存在するわけですが、そこは今後に期待したいところです。個人的には、知人と結婚して子どもを作るプレイヤーの血統とも言うべき家系図を広げていく遊びは、ぜひ復活させてほしいなと(笑)。

 話を本作に戻せば、思わず熱くなるライバル対決、芝質の適性などを含めて数多くのファクターが勝敗を分ける奥深さは、馬を生産するほどおもしろくなってきます。

 しかも『ウイポ9』は、サンデーサイレンスが種牡馬デビューする年からゲームが始まるので、彼の血が日本競馬を席巻していく中で、どうオーダーブリーダーとして成長していくのか、熱い展開の中で競馬史を築いていくことになります。SLGはある意味で、必死にもがいて前進している時期が一番楽しいと思うので、『ウイポ』ファンはそれぞれの思い入れや楽しみ方を本作にぶつけてみてほしいです。

(C)コーエーテクモゲームス All rights reserved.
※ゲーム画面の画像はすべてPS4版のものを使用しています。

データ

▼『Winning Post 9』
■メーカー:コーエーテクモゲームス
■対応機種:PC(Steam)
■ジャンル:SLG
■発売日:2019年3月28日
■希望小売価格:9,800円+税
▼『Winning Post 9(ダウンロード版)』
■メーカー:コーエーテクモゲームス
■対応機種:PC(Steam)
■ジャンル:SLG
■配信日:2019年3月28日
■価格:9,800円+税

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