『絵師神の絆』で最初に生まれた伽羅少女のブラック・ジャック。5年前までさかのぼる誕生秘話!【電撃PS】

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 “漫画の神様”と称された手塚治虫先生。数多くの名作を世に残し、不世出の漫画家として尊敬を集めた手塚治虫先生の作品を“伽羅少女”と呼ばれる美少女キャラクターへと擬人化したスマホアプリ『絵師神の絆』。4月7日配信予定の本作に参戦する伽羅少女が生まれるまでに迫る!

 手塚プロダクションとコンパイルハートが夢のタッグを組んで贈る『絵師神の絆』。今回は、本作に登場する“伽羅少女”のブラック・ジャックを描いたイラストレーター、ナナメダケイ氏にお話をうかがった。さまざまな設定画を見ながら、いかにしてブラック・ジャックは生まれたのか? 『絵師神の絆』のなかでも最初に参戦が決まった彼女の誕生秘話をお届けします!

――“手塚治虫作品のキャラクターの美少女化”という本作のコンセプトを、最初に聞いた際の感想を教えてください

ナナメダケイ氏(以下、敬称略):率直に、すごい企画だと思いましたね。擬人化とか美少女化といった作品は世の中に沢山あると思うのですが、すでに作品として出来あがっているものを、美少女化するというのはあまり聞いたことがなかったので。しかも“手塚治虫作品”ということで、剛速球の変化球が来たなという感じでした。

――イラストレーターとして、どのタイミングで『絵師神の絆』に参加されましたか?

ナナメダケイ:現在の『絵師神の絆』のプロトタイプにあたる、社内コンペがスタートになります。ちなみに、その社内コンペではブラック・ジャックとアトムを描きました。このコンペを通じて、最終的にブラック・ジャックを担当することになったんです。

――制作にあたり、まずはどのようなことを考えたのでしょうか。

ナナメダケイ:そうですね、ブラック・ジャックをデザインする際に『絵師神の絆』の伽羅少女のベースになるような部分を模索してほしいとお願いされました。具体的には武器や服装など、キャラクターデザイン全体の雰囲気や方向性を考えていった感じです。

  • ▲こちらは完成版のブラック・ジャック。デザインに落とし込むのに困ったという“縫い目”の要素は、髪飾り、足もと、コート、てるてる坊主など、ブラック・ジャックが身に着けているものに反映されている。

――社内コンペを通じて、ナナメダさんに依頼が来たときの感想はいかがですか?

ナナメダケイ:思い入れのある作品でしたので、素直にうれしかったですね!

――社内コンペですが、どのくらい前のことでしょうか? また、お仕事をご依頼されたときのお話を教えてください。

ナナメダケイ:2015年だから、5年前くらいですね。「今度こんな企画のコンペがあるから、来月の何日までに描いてみてほしい」という流れです。連絡がきてから、仕事の合間に少しずつ作業をしていました。

――社内コンペの企画として描いたときのデザインは、どんなものだったのでしょうか?

ナナメダケイ:社内コンペのときの“ブラック・ジャック”はお見せできませんが、肌色成分が多かったので、正直自分でもどうかと思っています(笑)。社内コンペが終わったときに「ブラック・ジャックらしさをもっと入れるべきだな」という思いもあり、改めて練り直して今のデザインに行きつきましたね。

――社内コンペで描かれたブラック・ジャックですが、作品への思い出がありましたら教えてください。

ナナメダケイ:ブラック・ジャックに最初に触れたのが、TVで放送されていた劇場版アニメの“ブラック・ジャック”だったと思います。原作コミックのブラック・ジャックよりもリアルな絵柄で、小学生ながら「なんかかっこいいキャラクターだな」と思って見ていましたね。大塚明夫さんの声も「渋くてかっこいい!」という記憶が残っています。

 しっかりと原作コミックを読んだのは中学生の頃で、図書室に並べられていた文庫版コミックを、休み時間を利用して読み漁りました。それが手塚作品の原典に触れる“ファースト体験”でしたね。アニメで言えば“三つ目がとおる”も好きでよく見ていました。手塚治虫作品に触れた順番で言うなら、アニメ→原典である漫画ということになりますね。

――原作コミックを読まれていたときは、すでにイラストの練習をされていたのでしょうか?

ナナメダケイ:イラストは好きで描いていたのですが、いわゆる漫画的なイラストというものはまだまだ……という感じでした。うまく描きたいけど、まだテクニックが及ばないというか……。将来担当することになるブラック・ジャックも、まだ描いていません(笑)。

 むしろ小さなマスコットキャラクターのようなものを描くのが好きでしたね。今でいうところのゆるキャラみたいなイメージのものです。現在のようなイラストを描き始めたのは、中学2~3年生あたりだったと思います。ちょうどブラック・ジャックに触れていた時期と重なりますね。

――ブラック・ジャックのイラストを手掛けることになって、最初に始めたことを教えてください。

ナナメダケイ:自分のなかのブラック・ジャックが曖昧になっていたので、改めて資料を見直したり、調べ直しをしたりしました。今読み返しても色あせない題材ですし、本当にすごいと思いながら振り返りましたね。

――『絵師神の絆』の完成版ブラック・ジャックのイラストは、原典であるブラック・ジャックからどんなデザインを入れ込もうとお考えになりましたか?

ナナメダケイ:やはり特徴的な「白黒の髪の毛、黒いコート、傷(縫い目)の部分を、どのようにデザインに落とし込むか?」ということを考えていきました。パッと見た瞬間に、ブラック・ジャックらしさを出しつつも、企画のコンセプトである美少女化という部分でどういう形にまとめていくかがネックでしたね。

 今回の企画のスタートの段階で、キャラクターの素の部分はあまり生かしすぎないようにとのディレクションを受けました。あまり原典のキャラクターと似すぎないよう、顔の縫い目の傷などは反映しないようにというディレクションもありましたが、ブラック・ジャックを描いていくうちに、顔の縫い目のあるパターンも提案し、担当者とすり合わせを進めていきました。

  • ▲完成版とは多くの要素が共通しつつも、ロリっ子になっているバージョン。かなり幼く見えるうえに、身長がなんとピノコより頭1つぶんは低い! 原典ではもちろんブラック・ジャックのほうが大きかっただけに、このギャップはかなり興味深い。

――このイラストは現在よりも、かなり幼い印象を受けますね。

ナナメダケイ:デザインした当初は、ロリキャラクターにしてギャップを狙ってみました。設定画からもわかるとおり、ピノコよりも小さかったんです。“意外性”や“面白さ”もでるかな…というイメージでやってみたのですが、最終的にはコンパイルハート作品や女性キャラクターが多く登場する作品の、センターポジションに来るキャラクター位の頭身に落とし込んでいきましたね。

  • ▲ブラック・ジャックの衣装のベースカラーは黒を意識しつつ、ワンポイントにリボンの色味を変えるなど、さまざまな案が出たそうだ。

――骸骨が目立つデザインも目を引くように感じますね。

ナナメダケイ:手塚先生のコメントで“メスで荒っぽく切り刻む姿”を海賊に見立ててブラック・ジャックという名前を付けた…と拝見したので、モチーフとしてその部分を拡大解釈してデザインに取り入れてみた案ですね。

 この時の服装はかなりアレンジを加えていまして、原典のイメージをどれ位取り入れるか…というふり幅を探っていたものでもあります。また、身体に傷を入れないなら、マスクや眼帯など、別のアイテムにして縫い目の要素を表現しようとも考えていました。縫い目の要素を改めて提案したときは、担当者といろいろと意見を交わしつつ「当初のコンセプトからブレることなく、原典のキャラクターと別物にしよう」と……。身体に縫い目がない、最初の案をベースに進めていきました。

  • ▲眼帯やマスクなど、完成版とはかなりかけ離れたタイプのブラック・ジャック。骸骨がより強調されており、ホラーテイストが強い印象を受ける。

――社内からの反応はいかがでしたか?

ナナメダケイ:原作のブラック・ジャックの要素を「どこまで入れるか?」ということは、よく相談しました。もっと原作に寄せるべきなのか、特徴的な部分を残しつつも、どこを着地点とするのか? ここが大きなポイントでしたね。

――佐藤社長からのご意見は、どのようなものでしたか?

ナナメダケイ:直接お話を聞いていないのですが、それこそ縫い目に関する部分は東風輪(コンパイルハート取締役社長)を含めて、色々と協議をしていただいたようです。最終的には縫い目の要素は、髪留め、コートの裾、襟、ストッキング、てるてる坊主などにモチーフとしてデザインを反映しました。ちなみに原作にも、てるてる坊主は登場しているので、アクセントとしておもしろい要素なのではと思っています。

――ブラック・ジャックの武器は、どのような変遷をたどったのでしょうか?

ナナメダケイ:武器のパターン案はいくつかありますが、ブラック・ジャックといえば基本となるのは手術用のメスですね。そこから派生してメスが変形して槍のようになったり、メスの要素を持った巨大な武器であったりと、主に3パターンを用意しました。ブラック・ジャックの進化の度合いによって、さらに豪華になるという方向性を決め、よりインパクトを求めた結果、現在のような大きなメスになっています。

  • ▲小型のメスをはじめ、十字架状に変形したタイプや手術台のライトをモチーフにしたタイプも存在した。

――全体的な制作を通じて、印象的だったディレクションなどはありますか?

ナナメダケイ:原典を生かしたいという意見、とにかくかわいくしたいという意見、最終的な色塗りの段階で、よりかわいく目力を強くしてほしいという意見と、思い返すとさまざまなディレクションが出ました。それだけ、伽羅少女へのこだわりが強いなと感じたものです。ですから原典がブラック・ジャックなので、クールでありつつも、かわいらしさを残すよう心掛けました。

――スムーズに進んだ部分はどこでしょう?

ナナメダケイ:デザインの方向性などの着地点が決まった後、キャラクターの差分作成などは非常にスムーズに進みましたね。

――進化後は、てるてる坊主も増えているようですね。注射を持っているタイプもいるようですが……。

ナナメダケイ:じつは、ピノコっぽくしているんです。助手のようなイメージで、てるてる坊主も進化させています。ゴテゴテしてしまう部分もありますが、進化したイメージを表現するときは悩んだりもしましたね。また、変化がわかりやすいように、ブラック・ジャックもへそ出ししている点にも注目ですね。もちろん、出しすぎはダメですけど(笑)。ぜひブラック・ジャックを進化させて、その変化をご覧いただければと思います。

――武器のメスを手に持たせず、浮かせたことには理由があるのでしょうか?

ナナメダケイ:初期段階の小さいメスのときは手に持たせようと考えていたんですが、最終的に巨大化してしまったので、流石にこのサイズを振り回すのも大変だろうと思いまして(笑)。

 それに3Dモデルにした際も、浮かせていたほうが動きもおもしろくなりますし、大きいメスを振り回して戦うよりも、軽やかにメスを扱ったほうがイメージにピッタリだと考えたんです。自立して浮遊させたほうが、見た目もかっこいいですね。開発画面やPVを見て、「おーーっ!!」となりました。

――設定画のなかには、ピノコがぬいぐるみとしてデザインされているものも見えますね。

ナナメダケイ:ピノコは、デザインとしてどこかに入れようと思っていたんです。でも、ピノコは伽羅少女として出したいので、外してほしいとお願いされましたね。ピノコではありませんが、眼帯の紐で先ほどもお話しした「“縫い目”の要素を入れられるのでは!」…と描いていたときに思っていたのですが、ドクター・キリコという正に眼帯キャラがいるので、そもそも使えない案だったなと反省しています。

  • ▲右肩にピノコや骸骨を乗せたブラック・ジャック。
  • ▲ブラック・ジャックらしさを引き出す眼帯のデザイン
  • ▲コートというよりもポンチョを羽織ったブラック・ジャック。右のイラストでは骸骨をあしらったカバンが見える。このときの設定ではアタッシェケースとしての機能が備わっていたようだ。

――最後に、ご自身がデザインされたブラック・ジャックのアピールと『絵師神の絆』を楽しみにされているユーザーさんへメッセージをお願いします。

ナナメダケイ:ブラック・ジャックはたくさんの人に愛されている作品で、自分としても思い入れのある作品です。やはり大きな作品ですのでプレッシャーもありましたが、それ以上に楽しく描かせていただきました。原典の“ブラック・ジャック”を感じることができるような、新たなブラック・ジャックとしてデザインしましたので、是非ゲームのプレイと合わせて『絵師神の絆』のブラック・ジャックも好きになってもらえると嬉しいです!

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※「株式会社手塚プロダクション」「手塚治虫」の塚は旧字体が正式表記

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